■唯一の強みだった「映画オタク」の肩書き

　アイドル活動を続けていくなかで、私は大事なことに気付きます。それは、『自分の強み』をつくることでした。あの子は歌がうまい、あの子はダンスがうまい、あの子は面白い…メンバーが多数いるグループのアイドルにとって自分だけの強みがあるというのは、かなり重要なものでした。私の場合、ダンスは上手くない、歌も自信がない、爆発的な面白さを持っているわけでもない、どちらかといえば他のメンバーよりも前に出ない大人しい人間。最初の頃はへこむことばかりで、正直どこかへ逃げたくなってしまう時もありました。ステージに立つ前に過呼吸になってしまったり、応援してくださるファンの方からの目が怖くかんじるときもありました。とにかく、自分に自身がなかったんですよね。

　そんな中で、「自分だけの強みってなんだろう？」と考えているうちに気付いたのが「映画が大好き」ということでした。映画はいつも私に、さまざまな主人公の人生を通して、頑張って生きていく意味を教えてくれていた。映画を観ている瞬間だけは辛いこともすべて忘れ、心踊る楽しさを感じていたのです。

　今思い返すと『三度の飯と同じぐらい映画が好き』だった。同じなんかい、と。食べることも映画を観ることも同じぐらい好きでした。オフの日は家に引きこもって朝から晩まで映画を観たり、所属していたグループの公式ブログに書くことといえばほとんど、観た映画の感想文だった。

　いつしか、周りのメンバーやスタッフの方、ファンの方々から「映画オタク」と呼ばれるようになり、探していた『自分だけの強み』というものが自身の無意識の行動や発言によって形成されていたのです。

　最初は、アイドルと映画ってかなりかけ離れていたジャンルだったので、「グループの要素には必要ないんじゃないか？」とか「他と比べると求められてないよな〜」なんて薄々感じながらも、自分の唯一と言っていいほどの強みでしたので毎度のごとく、「私は映画オタクです！ふんっ！！！」とめげずに胸を張って生きていました。すると、徐々に活動のなかで映画コラムのお仕事が来たり、テレビやラジオで映画の解説をさせてもらったり、映画に関するお仕事をさせてもらえる機会が増えていきました。口は夢なり。

　そんな中、自分でもびっくりしたのが、映画にキャストとして出演させてもらったこと。（映画「咲-阿知賀編-」船久保浩子役）まさかずっとスクリーンを観る側だった自分が、スクリーンに映される側になるだなんて夢のようなお仕事。アメリカンドリーム。そこから演技の魅力にも惹かれ、現在では映画ライターのお仕事と並行して俳優活動もしています。